若狭塗とは?福井県小浜市の伝統工芸・美しいお椀の魅力と歴史

若狭塗(わかさぬり)は、

日本を代表する伝統的工芸品の一つで、

福井県小浜市を拠点に発展してきた美しい漆器技法です。

その特徴は、何度も漆を塗り重ねることで生まれる独自の光沢と深みのある色合いです。

特に、若狭塗のお椀はその繊細な模様付けで知られ、

現代の食卓にも彩りを与えるアイテムとして、

多くの人々に親しまれています。

この記事で分かること

・若狭塗について
・若狭塗の歴史や魅力
・若狭塗の新しい取り組み

海面を模したと言われる模様が綺麗です

目次

若狭塗の歴史と起源

若狭塗のお盆の写真
若狭塗のお盆の写真

若狭塗は、約400年の歴史を持つ福井県小浜市の伝統的な漆器です。

その起源は江戸時代初期の1596年から

1615年頃(慶長年間)にさかのぼります。

若狭塗の誕生

小浜藩主の酒井忠勝

若狭塗が誕生したのは、

小浜藩の豪商である組屋六郎左衛門が中国から珍しい漆塗盆を入手し、

小浜藩主の酒井忠勝に献上したことがきっかけでした。

この美しい漆器に感銘を受けた酒井忠勝は、

地元の漆塗職人に同様の漆器を作るよう命じました。

技法の発展

若狭塗の技法の発展

若狭塗の技法の発展

  • 松浦三十郎の貢献:若狭塗の創始者とされる漆塗職人・松浦三十郎は、中国の漆器技法を参考に「菊塵塗(きくじんぬり)」を考案しました。
  • 若狭湾の影響:松浦三十郎は小浜湾の海底を模様化した図案を用い、独自の美しさを表現しました。
  • 装飾技法の進化:江戸時代後期になると、貝殻や卵殻を使用した華やかな装飾技法が発展しました。

さまざまな技術の融合ですね

歴史的展開

1635年、小浜藩主の酒井忠勝が「若狭塗」と命名し、藩を挙げて保護・奨励しました。

江戸時代には宮家、公家、諸大名への贈答品としても用いられ、高い評価を得ていました。

若狭塗の近代以降の発展

若狭塗の近代以降の発展

明治時代から大正時代にかけて、

若狭塗の生産量は飛躍的に増加し、

特に塗箸の生産が盛んになりました。

以下のような組織の設立が若狭塗の発展を支えました。

若狭塗組合の歴史

1879年:若狭塗箸購買組合が発足

1880年:若狭塗会社が設立

1916年:若狭漆器同業組合が設立

1923年:若狭塗購買販売組合が設立

1923年:若狭塗購買販売組合が設立

当時の小浜藩で生まれた漆器技法が、

現代に至るまで受け継がれ、進化を遂げています。

若狭塗の特徴

若狭塗の特徴は何層も作ること



若狭塗の特徴は、漆を何度も塗り重ね、

貝殻や金箔を使って複雑な模様を描く技法にあります。

その結果、見る角度によって異なる表情を

見せる独特の輝きを持つ作品が生み出されます。


若狭塗は、食器や装飾品など、さまざまな場面で使われていますが、

特に若狭塗のお椀や箸は日常生活の中で広く愛されてきました。

その美しさと実用性から、贈答品としても人気が高く、

全国的に知られるようになっています。

若狭塗の製造行程をみてみましょう

若狭塗の技法とお椀の製作過程

若狭塗の技法とお椀の製作過程

若狭塗が完成するまでには、非常に多くの工程を経る必要があります。

主な工程を順を追って見ていきましょう。

1. 下地作り

まず、木地をしっかりと補強し、塗りの土台を作ります。

下地作り

  • 刻そづめ:木地の繋ぎ目や傷を埋めて滑らかにします。
  • 布着せ:木地の合わせ目に布を貼り、強度を高めます。
  • 地の粉付け:粘土を焼いた土粉と漆を混ぜて塗り、表面を整えます。
  • 下地錆付け:赤土と漆を混ぜたものを塗布し、より滑らかな下地を作ります。
  • 錆研ぎ:乾燥後、表面を平らに研ぎます。

2. 模様付けと塗り

若狭塗の最大の特徴である美しい模様を作る工程です。

模様付けと塗り

  • 模様付け:青貝、卵殻、松葉などを使って装飾を施します。
  • 合い塗り:黄、朱、緑などの色漆を重ね塗りし、奥行きを持たせます。
  • 金箔置き:高級感を演出するため、純金箔を使用することもあります。
若狭塗に使われる素材

松葉
ひばの葉
籾殻
えごま
木綿糸

青貝卵の殻など、自然のものは何でもつかえます。

漆の種類

下地漆 梨地漆 透呂色漆 黒中漆 黒呂色漆 黒艶漆 生漆 等

3. 研ぎ出しと仕上げ

塗り重ねた漆の層を研ぎ出し、

若狭塗特有の美しい模様を浮かび上がらせます。

研ぎ出しと仕上げ

  • 石研ぎ:研磨して模様が出るまで削ります。
  • 艶塗り:漆を擦り込み、深みのある艶を出します。
  • 炭研ぎ:炭で丁寧に研ぎ、模様部分を滑らかに仕上げます。
  • 磨き:砥の粉や角粉で最終仕上げを行い、光沢を出します。

これらの工程は約20段階にも及び、すべて職人の手作業によって丁寧に行われます。

そのため、同じ模様の若狭塗は二つと存在せず、唯一無二の漆器となるのです。

若狭塗の特徴「起こし模様」

若狭塗の代表的な技法として、「起こし模様」があります。

これは、松葉や糸、籾殻などの自然素材を漆の下地に置き、

乾燥後に漆を削ることで模様を浮かび上がらせる技法です。

この技法により、200種類以上の個性豊かな模様が生み出されてきました。

例えば、

  • 青貝塗(あおがいぬり):貝殻を散りばめた幻想的な輝きのあるデザイン
  • 卵殻塗(らんかくぬり):卵の殻を細かく砕いて貼り、繊細な模様を作る
  • 菊塵塗(きくじんぬり):細かな粉を散らしたような模様

など、さまざまな技法が存在します。

若狭塗の魅力の一つは、その精巧な模様付けにあります。

漆器の製作過程では、何度も漆を塗り重ね、

乾燥させる工程を繰り返します。

この作業により、若狭塗特有の深い色合いと光沢が生まれます。


さらに、貝殻や金箔などを埋め込んでから研ぎ出すことで、

複雑な模様が浮かび上がります。

この研ぎ出し技法は、若狭塗の最大の特徴であり、

職人の熟練した技術が求められます。

若狭塗のお椀は、特に模様付けの工程に時間と手間がかかります。

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