「なぜ、余分なものを省いた和紙が選ばれるのか?」
そう疑問に思ったことはありませんか。
1500年以上の歴史を持つ越前和紙は、チリのない真っ白な仕上がりで知られ、卒業証書や国宝修復、美術作品にまで使われています。

余分なものを省いた和紙でチリのない真っ白が特徴です。
実はその背景には、職人たちが受け継いできた独自の技術と、自然素材を活かした製法があるのです。
この記事でわかること
1️⃣ 越前和紙の歴史 📜
2️⃣ 越前和紙の作り方 🪣
3️⃣ 越前和紙の特徴と魅力 🌸
余分なものを省いた和紙とは?

チリのない真っ白な仕上がりの理由
越前和紙が「余分なものを省いた和紙」と呼ばれる理由は、その徹底した製法にあります。
原料となる楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)の皮を丁寧に剥ぎ、不純物や汚れを徹底的に取り除くちり取りという手作業の過程があります。
この工程があるため、紙の中にチリやゴミが残らず、透き通るように白い和紙が出来上がります。

日本で1番古い和紙の産地です
また、漉きあがった紙は、板干しや乾燥機で仕上げられる際に表面を均一に整えられるため、ムラのない滑らかな質感になります。
これが「真っ白で清らかな仕上がり」と評価される理由です。
この特徴から、卒業証書や表彰状など、清潔感と格式を求められる場面で多く採用されているのです。

高級感が出る仕組み
越前和紙の高級感を生み出しているのは、単なる「白さ」だけではありません。
- 繊維の均一さ
職人が繊維を均等にほぐし、ネリ(トロロアオイの根からとれる粘液)を加えることで、薄くても強靭で破れにくい紙ができます。繊維が均一に絡み合うことで、表面の滑らかさと光沢が増します。 - 装飾技法の存在
「ひっかけ」や「流し込み」といった伝統的な技法を使うことで、鳳凰の枠や雲竜模様など、装飾性の高い和紙が作られます。特に、楮を粗く砕いて散らす「雲竜紙」は、光の反射で独特の艶が生まれ、高級感を演出します。 - 用途の広がり
美術作品の下地や文化財修復に使われるほどの品質を誇るため、その「格」は自然と紙に宿ります。インテリアやランプシェードに使われると、柔らかい光を演出し、空間全体を上質に見せてくれます。

つまり、「余分なものを省いた和紙」とは、不純物のない純白さと、伝統技法が生む強さ・美しさを兼ね備えた和紙のこと。
越前和紙が古来から愛され、現代でも高級素材として選ばれ続ける理由は、この“無駄をそぎ落とした本質的な美しさ”にあるのです。
越前和紙の歴史
よく見る卒業証書。
— 山次製紙所 (@yamatsugiseishi) February 2, 2021
機械抄きのものも多いですが、
山次製紙所では、手漉きで行っています。
伝統的な越前和紙の技法ひっかけで、光沢のある鳳凰枠を表現。
その中に、楮を粗く砕いた雲竜を散りばめることでさらに光沢が増し、高級感がでます。

※ムービーもぜひご覧ください! pic.twitter.com/hvfD0PcfF8
1500年以上続く伝統の始まり
越前和紙の歴史は、1500年以上前に遡ります。
奈良時代にはすでに紙漉きが行われていたとされ、平安時代には貴族や寺社で使用される高級紙として発展しました。

特に「奉書紙(ほうしょし)」と呼ばれる和紙は、優れた品質から公文書にも使われていたほどです。
江戸時代になると、越前和紙は幕府の「御用紙」として指定されました。
奉書紙(ほうしょし)

その結果、日本全国にその名が広まり、さらなる発展を遂げます。
現在も職人たちによって伝統技法が受け継がれ、高品質な和紙が作られています。
職人が守る伝統技法
越前和紙は、一部の企業では機械生産もありますが、いまだに職人の手作業によって作られています。
特に「流し漉き」という技法は、熟練した技術が求められる高度な手法です。

一枚の紙を仕上げるまでに多くの時間と労力を要しますが、その分、耐久性と美しさを兼ね備えた和紙が生まれます。
現代では、伝統技法を守りながらも、新たな和紙製品の開発が進んでいます。
例えば、インテリア用の和紙や、書道用の特別な紙など、用途に合わせたさまざまな和紙が作られています。

伝統を継承しつつ、新しい挑戦を続けることで、越前和紙はさらに進化しているのです。
近代以降の発展と現代への継承
越前和紙は近代以降も進化を続け、現代に受け継がれています。
なぜなら、西洋紙の普及で需要が減った時代にも、職人が新しい価値を模索し続けたからです。

実際に、美術・工芸用やインテリア素材など用途を広げ、世界的にも注目される存在となりました。
つまり越前和紙は、伝統を守りながらも未来へ挑戦し続ける日本文化の象徴なのです。
越前和紙の作り方
原料の処理と繊維の準備
和紙作りは、原料となる楮(こうぞ)や三椏(みつまた)などの繊維を丁寧に処理することから始まります。
まず、木の皮を剥ぎ、不純物を取り除いた後、「煮熟(しゃじゅく)」という工程でアルカリ性の薬剤を使い繊維を柔らかくします。
この処理が不十分だと、紙の仕上がりにムラが出たり、硬くなったりする原因になります。
煮熟した繊維は、水にさらして余分な成分を除去し、叩いて繊維をほぐします。

この作業を丁寧に行うことで、繊維が均等に広がり、なめらかで強度のある和紙が作られるのです。
職人は紙の用途に応じて、繊維の状態を見極めながら作業を進めます。
紙漉きの技法
越前和紙の抄きには、用途に応じてさまざまな技法が使われます。
代表的な技法として「流し漉き」「溜め漉き」「流し込み」「ひっかけ」の4種類があります。
【越前和紙 紙漉き職人~限りなき表現に魅せられて~】https://t.co/TCjL57wNbP
— 明日への扉 by アットホーム (@AthomeTobira) August 22, 2024
金型を使って模様をつける技法「引っ掛け」。
型を原料の中に沈めるとエッジに繊維が引っ掛かり、それを紙に転写することで模様が浮かび上がる。#越前和紙 #紙漉き職人 #古澤花乃 #福井 #越前市 #明日への扉 pic.twitter.com/jcDCX8xEz3
紙漉きの技法
技法名 | 特徴・工程 |
---|---|
流し漉き | 水に溶かした紙料に「ネリ(トロロアオイ)」を加え、漉簀(すきす)ですくい上げる。漉き舟の中で前後左右に揺らしながら繊維を絡ませ、層を重ねることで厚みを出す。最後に水を払って表面を整える。 |
溜め漉き | ネリを使わず、水と紙料のみで漉く。金網ですくい上げた後、素早く揺らして繊維を絡ませる。一度の作業で紙を作るため、流し漉きとは異なる風合いになる。 |
流し込み | 紗の上に模様を型どった金属枠を置き、色をつけた紙料を型の中に流し込む。その後、別の紙の上に伏せることで模様を移す。 |
ひっかけ | 金属枠を三椏の紙料がある水槽につけ、枠に紙料を付着させる。これを紗の上に写し取り、さらに別の紙に模様を移す技法。 |
流し漉きは、越前和紙の代表的な技法であり、繊維が均一に絡み合うことで丈夫な紙が作られます。
一方、溜め漉きは、一度の動作で紙を作るため、紙の表面に独特の風合いが生まれます。

流し込みやひっかけは、装飾や模様を施す際に使われ、デザイン和紙の制作に適した技法です。
乾燥・仕上げに込められた職人技
紙を漉いた後は、乾燥と仕上げの工程に進みます。
乾燥方法には、昔ながらの「板干し」と、現代的な「乾燥機」の2つの方法があります。
板干しは、和紙を木の板に張り付け、自然乾燥させる伝統的な手法です。

ゆっくりと水分を抜くことで、紙の繊維が均等に馴染み、独特の風合いと強度が生まれます。
特に、書道用紙や美術用紙などの高級和紙は、この方法で仕上げられることが多いです。
一方、乾燥機を使う方法は、大量生産向きであり、短時間で均一に乾燥させることができます。
商業用の和紙や日用品向けの和紙では、乾燥機が使われるのが一般的です。

乾燥が終わった後、職人が一枚ずつ紙の表面を確認し、仕上げ作業を行います。
ここで紙の余分な部分を取り除き、表面を整えることで、均一な品質の和紙が完成するのです。
越前和紙の材料と道具

和紙の主な原料
越前和紙の原料には、主に「楮(こうぞ)」「三椏(みつまた)」「雁皮(がんぴ)」が使われます。
それぞれの繊維の違いによって、和紙の風合いや強度が変わるのが特徴です。
和紙の主な原料
原料 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
楮(こうぞ) | 繊維が長くて強い | 書道紙・公文書 |
三椏(みつまた) | しなやかで光沢がある | 印刷用紙・障子紙 |
雁皮(がんぴ) | きめ細かく高級感がある | 美術紙・高級文書 |
楮は丈夫で破れにくいため、書道用紙や版画用紙によく使われます。
一方、三椏はなめらかな質感が特徴で、和紙の名刺や封筒などにも適しています。
雁皮は高級感のある紙を作るのに向いており、美術作品や古文書の修復にも使用されます。
かこんばんは〜⭐️
— 【さくらいと】朝日奈 花子 (@KAKO_sakulight) November 19, 2022
本日は越前和紙の材料ともなっている『楮(こうぞ)🌳』の収穫をに行ってきました✨
蒸したらスルスル〜と向けていくのがすごい!
そしてめちゃくちゃいい香り❤️
さつまいものような香りが食欲をそそりました…🤤
この子達は一体どんな和紙になるのか楽しみですね!#さくらいと pic.twitter.com/n4izMTE2fY
和紙作りに必要な道具
和紙作りには、いくつもの専用道具が必要です。
代表的なものを紹介します。
和紙作りの道具
道具名 | 役割 |
---|---|
漉簀(すきす) | 繊維をすくい上げる道具 |
漉舟(すきぶね) | 紙料を混ぜるための大きな桶 |
ネリ | 水と繊維を均一に混ぜるための粘液 |
木枠 | 漉簀を支える枠 |

特に「ネリ」は、紙料が均等に広がるようにするために欠かせません。
トロロアオイの根から作られ、職人は気温や湿度に応じて量を調整しながら使用しています。

このように、伝統技法には細かな工夫が取り入れられているのです。
トロロアオイを使った手漉き技法

越前和紙の品質を支えているのは、トロロアオイを使った手漉き技法です。
これは植物の根から得られる粘液が、紙料の繊維を均一に分散させる役割を果たすためです。

実際に、この技法によって極めて薄くても強靭で美しい和紙が仕上がり、書道や版画、工芸品に広く用いられています。
つまりトロロアオイは、越前和紙の独自性と高品質を守る重要な要素なのです。
越前和紙の魅力
【#日本ブランド発信事業】
— 外務省 (@MofaJapan_jp) November 11, 2019
越前和紙問屋を営む杉原吉直さんを #ポーランド と #アラブ首長国連邦 に派遣。「和紙ソムリエ」として #和紙 の職人と様々な使い手との間を結び,和紙の用途をオーダーメイドでインテリアやデザインにも広げる,工芸の新しい取り組みを発信しました。 pic.twitter.com/AWMJ7nCbe8
自然と共生する和紙文化の価値
越前和紙は、日本の伝統工芸のひとつとして高く評価されています。
その技術は1500年以上にわたり受け継がれ、手漉きならではの風合いと強度が特徴です。

特に、美術品や書道用紙としての価値が高く、国宝級の文化財修復にも使用されています。
また、越前和紙の技法は「重要無形文化財」にも指定され、日本の文化を支える貴重な技術のひとつです。

日常からアートまで広がる活用法
近年、越前和紙は伝統的な用途だけでなく、さまざまな分野で活用されています。
例えば、和紙を使ったインテリアや照明、名刺、包装紙などが人気を集めています。
特に、和紙のランプシェードは、柔らかな光を演出するアイテムとして、ホテルや店舗のインテリアに採用されています。

また、越前和紙は海外でも注目されており、フランスのアート市場では版画や水彩画の紙として使用されています。
さらに、サステナブルな素材として環境意識の高い層にも支持され、新しい活用方法が模索されています。
世界から注目される日本の手仕事
越前和紙は今や世界から注目される日本の手仕事です。
なぜなら、1500年以上受け継がれた伝統技法と、現代的なデザインとの融合が評価されているからです。

実際に、海外の美術館やギャラリーで展示されるほか、インテリアやファッションブランドとのコラボレーションも進んでいます。
つまり越前和紙は、日本の職人技を象徴する文化遺産として、国際的な価値を持つ存在なのです。
まとめ|なぜ余分なものを省いた和紙が選ばれるのか
越前和紙は、1500年以上の歴史を持つ日本の伝統工芸です。
職人の手による丁寧な抄き技法によって、丈夫で美しい和紙が作られています。
また、現代ではアートやインテリアなど、新たな分野での活用が広がっています。

今ではアートやインテリアに使われます
和紙の魅力は、その質感や風合いだけでなく、職人の技と歴史が生み出す価値にあります。
この伝統が次世代へと受け継がれていくことで、越前和紙の美しさはこれからも輝き続けるでしょう。